「もしも香りがあったなら…」
を、テーマに、いろいろなモノゴト
からイメージを得て調香し、香りの
景色を描いてゆきます。
aroma_letterフォト
File:002【 ひとめぼれの瞬間 】
idea from
〔 トリツカレ男 / いしいしんじ 〕

「もしもひとめぼれの瞬間に、香りがしたのなら」

突然ですが、ひとめぼれ、したことありますか?

今回は、いしいしんじさん作の「トリツカレ男」のワンシーン、

トリツカレ男ジュゼッペが、ペチカという女の子に出会い、

恋にトリツカレたシーンを調香してみました。

はまる・おちる、ではなく、恋にトリツカレる。

それはまるで事故のように、天気のいい秋の月曜日の午後、

おおぜいの人が散歩を楽しんでいる公園で、ジュゼッペにやってきたのです。

ひとめぼれの香りがあるなら、それはきっと、甘くなんかないと思うのです。

その瞬間の香りは、ただただ、色鮮やかなスローモーションの中、

息の止まるような、よくわからない衝撃をうけとめるので精一杯で、

追い立てられるようにも感じるほどの、勢いのある香りのような気がします。

スパイシーで熱のあるブラックペッパーやカルダモン、

でも、一方で明るい強い風が吹きぬけるような、レモンとペパーミント。

目の前が一気に開けるような香りです。

三段跳び、探偵ごっこ、サングラス集め…ジュゼッペのトリツカレるものごとは、

役に立たないことも多いけれど、その見事なまでに深いトリツカレっぷりを、

あきっぽいわたしでも、うらやましく思うのです。

大人になっても、(恋に限らず)ひとめぼれというトリツカレ事故は、突然やってくる。

こころの高鳴りに正直に、そして思いをさらけ出して本気になるのは、

なかなかむずかしいことだけれど、ジュゼッペのように、いつだって

からだまるごと本気でトリツカレていきたいな。

「そりゃもちろん、だいたいが時間のむだ、物笑いのたね、

役立たずのごみでおわっちまうだろうけど、でも、きみが本気をつづけるなら、

いずれなにかちょっとしたことで、むくわれることはあるんだと思う」

(P29ハツカネズミのことばより)

Date:2016.2.14

Title:「ひとめぼれの瞬間 (I had a crush on her.)」

File:002/idea from〔 トリツカレ男 / いしいしんじ 〕

Blend:
レモン(明るく勢いよく、目の前が開けるイメージ)
ペパーミント(頭や心に強い風が吹く。覚醒するような香り)
レッドマートル(エデンの園とその香りの象徴とされる植物)
ベイローレル(熱を感じる乾いた香り。平和と勝者のハーブ)
カルダモン(中世より、媚薬として使用されてきたスパイス)
ブラックペッパー(心と体に熱を与えるスパイス)

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